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実は私、下りが不得意だったのです。
正確にはMTBでの下りは未だに不得意ですし、めちゃめちゃ速い人と比較したら全然敵いません。
今は私のロードでの下りを「速過ぎますね」と言われるのですが、速いというより安全にということを考えた先にあるのが今でもあります。私にとっては安全=遅い=ブレーキではないのです。ストレスを無くしたり、減らしたりすることは安全に近づくと思います。
中高生の時、BMXにも乗っていたのですが、縦方向の動きが不得意でした。だから、自転車を漕げるんだけど、乗れない。自転車を自由に扱えない。
そして、それは自分の限界だから、たぶん無理だろう…とBMXを諦め、MTBもイマイチ乗らなくなったりしました。
そこから10数年、ロードに乗るようになりました。周りには諸先輩方が沢山いてくださって、前を後ろを連なって走ってくれました。上手な人も下手な人もいますが、それが勉強になりました。百聞は一見に如かずです。
しかし、勘所がわからないまま数年乗っていたのですが、結局怖いのに変わりないんです。
「速い人は怖くないのか???」
と思っていました。頭の線がプッツン(古)しているんじゃないか?と。
しかしある時、「レバーはこうやって握るんだよ」と教わりました。その後、ロードに乗ってみると不思議なことで身体の幹の部分から上手に力が抜け、入るところに入るようになり、強く踏めるようになったばかりか、身体とバイクのバランスが保ちやすくなりました。
「なんということだろう…たったこれだけで…」
と驚きました。
ですから、今でも自転車の納車時にはペダリングの仕方やケイデンスなどどうでも良いから、レバーの握り方をお伝えしています。自転車の乗り方を考える時、バットの持ちからから入る野球の教えは自転車の場合レバーの握り方にあたるでしょう。バットの握り方を知らず、ヒットもホームランも打てないのは間違いないとわかると思います。
自転車だからとペダルやその周辺の動きを主体に考えてしまいますが、野球も全身使うと思います。バットを持つ手と腕だけに注目させないと思います。「腕だけで振るな」とむしろ教えるでしょう。そうであれば、自転車も「脚だけで漕ぐな」と教わるはずですが、どのくらいの人がそれを教わったり、伝えたりしているでしょう。ほとんどされていないと思います。
私は下りが不得意でしたが、今では慎重にスピードを管理しつつ、自分の限界を高めた状態でその限界の中で余裕ができるようになりました。
そのためにもう一つ大事なのは、セッティングです。乗る時のフォームしかり、機材選びでも怖さが増すことはあります。例えばタイヤ。
当時の私はカーボンホイールに手を出し、チューブラーってカッコイイぜ、軽いぜとミーハーぶっていたのですが、その後でわかったのはそれが怖さを増す原因でもあったことです。
チューブラータイヤは接地感に欠けます。ゆえに軽く感じます。軽快感もでます。しかし、不安感を同時に演出します。実際にグリップを作り出す能力が低いので滑り出しやすいでしょう。滑ることをNGとするのではなく、それをコントロールすることが必要な乗り手の能力です。むしろ他にないメリットはタイヤが丸いことによるフィーリングの違いです。丸いのでロール感はナチュラルで、滑り出しやすいけれど自然思います。しかし、全体としてこれを良さとするかどうかが乗り手に因ります。結果、私には取り扱えないものでした。
私はチューブレスタイヤを使うようになってから、走行中全域でのセーフティポテンシャルの向上を感じています。
明らかに怖さが減りました。安定感を感じます。同じスピードでもスピード感を感じにくくなりました。ですから、下りが怖い人にはチューブレスタイヤの使用をオススメします。太さは23Cでも25Cでも、どちらも試すと良いと思います。チューブレスに限らず、タイヤの太さ選びは使用用途、路面、体重、空気圧の相関関係だからです。
「パリルーベなどの石畳路面で安定していた」とNIPPOヴィーニファンティーニの選手達もコメントしているのはその様な理由です。
私は今、フォーミュラプロチューブレスのライトを使っているのですが、RBCCと比較してみると、軽量であるから走行感も軽いのか?と言えばそうは感じず、むしろ接地感の低さを感じます。また、ゴムが薄くても剛性を保たないといけないからでしょうが、全体に張りの強さを感じます。ゆえ、RBCCの方が路面の凹凸をキレイに捉え、いなし、蹴っていると感じます。軽量タイヤによくあるパターンではあるので、使用するシチュエーションを限定すればよいのだと思いますが、初めての路面や安定感を求めたい場合にはデメリットもあるでしょう。
バイクコントロールに自信があればタイヤに軽量性を求めても平気でしょう。
そうでない場合、軽量であることで乗りにくさにもつながるので、怖さと転倒へのチャンスを拡げるだろうと思います。もっと言えば、自転車自体の重量に関してもです。軽すぎる事はメリットではありません。
チューブレスはIRCがいい
「どっちもいいですね」なんて言葉は自転車屋さんがよく言いそうです。でも私は言いません。チューブレスはIRCが一番いいです、他より良いです。掛けている研究開発コストが全然違います。他メーカーでチューブレスの評価をするならば、それは正しくチューブレスタイヤを使っている人に話を聞いてからの方が良いと思います。なお、多くのお店でチューブレスを勧めない理由は「取引の厚い代理店との関係性」からである事があります。中身で考えればチューブレスタイヤはIRCかそれ以外か二択ですから、IRCを扱う代理店数社との儲け話が無ければ販促もありません。ちなみに、私はその手の儲け話に疎く、無関係であることが多いので(だめですねぇ…)、IRCを売るより他メーカーのタイヤを売る方が儲かることは知っていますが、ビジネスライクな選択をしていません。思いは乗り手とともにあります。
まして、カーボンホイールの殆どはチューブラー。ゆえ、チューブラーを肯定するほうがメリットが大きいのです。あるいは、チューブラーのデメリットを感じないくらいバイクコントロールの上手な方が多いのかも知れませんね。
ちなみに、自転車メディアに上がる幾つかの写真でチームに供給されているIRCのチューブラータイヤを見つけては「プロトタイプか?発売は?テスト中だろう」などと書かれますが、あり得ません。IRCがチューブラータイヤをリリースすることは無いでしょう。しかし、チームは実際に使っていく中で”本音”を漏らしているのです、「チューブレスはいい」と。それが本当に”選手が選ぶ”ということではないでしょうか。
まずチューブラーありきではありません。
「チューブレスがいいですよ」というと、二言目には「チューブラーよりいいのか?」と聞かれることが多くありますが、そもそもチューブラーありきである背景は「プロが使っているから」だと思うのです。しかしメカニック側からしますと、沢山のタイヤを取り付ける際には貼り付ける方がリムを選ばないので楽だったりもします。下地さえできていれば、それほど苦労はしません。むしろ、クリンチャーの場合にはリムとタイヤの寸法が一定規格ではないがゆえ、かなり面倒です。また、パンクしても走り続けられることはレースを続けるのに必要なことなので、チューブラーのメリットになっています。プロ選手は契約している機材を使うだけですし、メカニックやチームに与えられる立場なので、彼らがチューブラーを選んでいるわけではありません。
むしろ、選手はそこまで気にしていません。一部のメカに詳しい選手がする発言が目立ちますが、殆どの選手は”どうでもいい”とすら思っています。そうでないとレースが出来ません。余程の特殊能力がない限り、「Macじゃないと仕事ができないです」という社員が居ないか必要ないのと同じで、備品を使うのも仕事ですから。
”レースをするわけではない”のであれば、私達は自分自身のポテンシャルをもっと引き出す方向に機材を選び、セッティングをし、それらの”道具”を使うためのノウハウを共有しあうべきでしょう。
まとめると
自転車での安全の実現には、結果的に速さも同居しています。安全に走るには安定していることが必要で、自分自身のポテンシャルを引き出せるので、結果的に速くなってしまうということです。ゆえ、速いけど転んだり、事故が多い人というのは速さを実現する時のアプローチが異なっている(間違っているし、不安定である)ということだと思います。その様な人から何かを学んではいけません。下りでは”コーナーに突っ込む”なんて表現はしません。そのようにする人から学ぶことはありません。
安全を実現しやすくする方法の一つがタイヤというわけです。この記事は単なるタイヤの広告ではなく、そういうことの寄せ集めによってバイクをコントロールしやすくすることができますということを言いたいがためです。
そのような多くの理由においては、一般的に聞くものの中に正解と不正解が入り乱れています。
例えば、怖いからと安直にハンドルを上げ、ステムを短くし、乗り手の感情に対して同情をすることは一見歓迎されがちですし、それをしないアドバイザーに対しては「厳しい、本人のことを考えていない」と責められがちです。しかし、これはライダーの成長を阻害し、怖さの克服を遠のけます。恐らく、怖さは克服するより、”とりあえず遠のける”方が楽にモノを売れるのは間違いありませんし、クレームを生むことも避けられますが、真にライダーの成長を育むことは出来ないと思います。
以下はツイッターのモーメントとして長元坊バイシクルツアーズの飛松巌さん(Toby)が書いたものです。
彼と私は以前同じ職場にいて、色々と議論を交わした中でもあります。自転車にあまりに真面目過ぎて、商売の為にウソを付くのも苦手な二人です(笑)。本当のことを伝えたい、芯を突きたいとの思いから、今回も文字にしてくれています。
ぜひ読んでみて下さい。
私が考えていることとほぼほぼ同じですし、私が下っている(走っている)最中に実行していることそのままでもあります。「え、こんなに多くのことをやっているの!?」と思われるかもしれませんが、市街地ではさらに多くの情報処理を求められますね。