当店ではラテックスチューブを販売していません

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ここ数年の間、ラテックスチューブが流行っているという状況につきまして、「ありませんか?」と店頭で聞かれることがあるのですが、「ウチでは置いてません」という解答をしています。

ラテックスゴムはブチルゴムと比較して走行抵抗が少なくなることが、それを使う理由でしょう。そのデメリットとして空気が抜けやすくなるということは広く伝わっているようですし、普段から不便を被るわけですが、熱と劣化に弱いということはあまり伝わっていないかも知れません。

カンパニョーロのハイペロンクリンチャーは、その当時カーボンクリンチャーの先駆けとしてデビューしたのですが、そのリムには「ラテックスチューブは使用禁止。熱によって溶け、転倒したり死亡したりする可能性があります」とシールが張ってありました。

ラテックスは直射日光や蛍光灯等によっても劣化が早いです。紫外線はもちろんのことですし、空気に触れているだけで劣化します。

■ オゾンなどによる酸化劣化
■ 紫外線などによる放射線劣化
■ 疲労劣化

上記の劣化を発生させる場所として以下が挙げられます。
■ 直射日光にあたる場所
■ 蛍光灯の紫外線にあたる場所
■ 温度、湿度変化の激しい場所(結露ができる場所)

期間を示しますと、長くて3年、短くて1〜2年でダメになりますとあるんですけど、3年というのは日本国内のメーカーのように管理のしっかりした状況での最長であって、恐らく半分程度と考えるのが常識的かと思います。なおかつ、高温多湿の環境下でどこまで保つかわかりません。(某国内メーカーのラテックスチューブなら安心できるという意味ではありません。むしろ、某ホイールにはそれがオススメだという考えには同意しかねます。)

急にダメになるわけではないので、その期間の終りに近い段階で耐熱温度に近いストレスを受けた場合、バーストしたりするケースもあるでしょう。おおよそ、ラテックスゴムの耐熱連続使用温度は70度、瞬間使用温度は120度。対してブチルゴムは、連続使用温度は110度。瞬間使用温度は150度です。このデータはメーカーにより異なります。実際、アルミリムで溶けたという記録は良く見かけます。

前述のカーボンクリンチャーでは熱が逃げにくいので、リムが熱に弱いのと同じ理由でチューブも加熱されますので、それによって危険性が高まるということですが、アルミリムでも状況次第では安全性を欠く事態も考えられます。

数ワットの削減効果を得るのに対して、それと引き換えに受け入れるリスクが大変高いと思いますし、パワーメーター登場以降は兎にも角にも抵抗削減に一生懸命になる傾向は見えてきています。

そのあたりについてどの程度、どのようなリスクを許すかは、メーカーやショップに寄って異なりますが、IRCやコンチネンタルはラテックスチューブをリリースしていないことは、そういった判断の一部でしょう。

当店では、「危険性を知っていればいいじゃないか」「使っていて問題ない」と言われる方もいらっしゃると思うんですけど、そのリスクは思っているより高いと思うので、当店の基本的な方針である「自分が使わないものは売らない」という基本に忠実にすることにしました。
※当店ではタイヤに関して、そういった安全性に対する配慮と考え方に同意し、また性能を鑑み、IRCをオススメしています。

よく言いますが、安心と安全は違います。むやみな安心は安全を知らず知らずの内に脅かすことがあるのです。それが冗談ではないレベルで”命がけ”になってしまっている事に気が付かない方もいます。以前のように、現実の世界との接点を持ち続ける方が多い状況でしたらそれが伝わるのですが、現在では流れている情報だけをもとにして安易に使用するケースが有ることを考え、ラテックスチューブの販売をしないようにしています。ご不便をおかけしますが、ご理解ください。