クランク長についての最近の話

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どうやら、Team Skyはクランク長が見えないように隠しているらしいです。
自転車乗りにとって常に問題であるクランク長。常に熱い議論がありながら、結論は先送り。そして、元に返るの繰り返し。

しかし、”諸説ある”という状態から、一定の結論は出始めているようですし、あのSKYはクランク長を伏せているという噂が…。というわけで「今もう一度、クランク長が熱い!!!」のです。

Crank length: Forget leverage and power, it’s all about the fit
https://cyclingtips.com/2017/09/crank-length-forget-leverage-power-fit/

ちょっと前にアップされた記事、その事についてザッと和訳、あるいは付け加え、私の意見も追記してみました。ちょっと長いですが(あ、いつもか笑)、暇な時にでも読んで頂き、頭を捻ってみてください。

長いほうがより大きなパワーが出るというのは誤り。

以前は”長いほうがより大きなパワーが出る”と言われていたのですが、これは全く間違いであることが分かっています。とは言え、その実験は1983年に行われたものなので、”今まで何してたの?”っていう感じですけど、自転車では特に保守的な考え方(軽いほうが速いとか)が支配しているので仕方ないかもしれませんし、それくらいクランク長を決定する過程は複雑だということでしょう。

1983年にOmri Inbarが行った実験では22歳〜27歳の13人の被験者に対して、125ミリ〜225ミリまでのクランク長においてシッティングで30秒間の平均とピーク出力を測定しました。この中で最適なクランク長は164ミリと166ミリまであることがわかり、最適な長さは足の長さに依存する事がわかった。また、そこから5ミリ短い場合と長い場合のデータはそれぞれ0.77%、1.24%しか変わらなかった。

また150ミリより短いか200ミリより長い場合には大きなパワー変化はなく、125ミリと225ミリの両端では2-5%の出力変化しかみられなかったというものです。

また、2002年にMcDanielらにより行われた研究ではサイクリングの代謝コストは出力、ケイデンス、ペダル速度に大きく依存していることを明確に示し、145/170/195ミリのクランク長による代謝コストの差は殆どなかったとしています。

さらに2017年、Ferrer-Rocaらはより長いクランクが関節の屈曲を増加させ、股関節と膝関節の両方で必要とされる運動範囲を指摘し、より短いクランク長を選択した方が怪我の受傷リスクを減らすことが出来るとしました。


それで結局、正しい長さはどの程度なのか?

1976年時点では脚長の20%としていた(脚長がどこを表すのは不明だが、大転子までの距離?)が、未だに曖昧なままになっており、単純な計算から複雑なアプローチに至るまであらゆる方法が提案されてきた。非常に複雑であるがゆえ、問題を解決することが目的ではなく、機能的結果との間の関連性を記述するということになっているケースが多い。また、クランクセット自体が高価であるがゆえ、自転車店でのアドバイスを受けることが理にかなっている、ともしています。

ある自転車店の店員は「ライダーのサイクリングの目標とライディングに関する規律を理解し、身体(柔軟性、関節の範囲、怪我)を評価することで、どのクランクの長さが最も適切かを判断します。」と言います。また彼は、端的に言えば、身長が正規分布の真ん中に位置する人にとっては167.5-175ミリのクランクが正しく機能すると言い、メーカーは人体測定や研究の結果からクランク長を決定しており、それは悪くない数字だろうと言っています。したがって、クランク長を変更する必要はなく、むしろ変更した場合にはその特徴に合わせてライダー自身がペダリングを適応させることは可能だとしている。つまり、「どの長さのクランクを使うかに関わらず、怪我のない効率的なペダリングを可能にすることを考える」と結論づけます。

なるほど、現実的な意見ですね。

クランク長を短くすることで、よりアグレッシブなポジションをより効率的に安全に確保することが出来るともあり、例えばTTやトライアスロンのような空力を考えたポジションでも、股関節の屈曲を利用しつつ大腿骨と上半身との間のスペースを確保できるために短くする傾向があります。ここまで研究が進みますと、これは一つの傾向ではなく、一定の結論なのではないかと思います。

もちろん、パワーライダーには長く、循環器系フィットネスの強い人には短くなど、従来からの考え方もあります。

別の視点として、クランクの長さがライダーの重量バランスを取る方法に影響を与えるとも言えます。典型的な男性は上半身が強く、クランクが長いほどハンドルバーとのバランスを保つのに役立ちます。上半身が弱い女性の場合には、短いほうがバランスを保ちやすい。つまり、身長以外にも憂慮すべき点がありそうです。

ロードとマウンテンバイクの両方に乗る人の間では、マウンテンバイクの方が2.5-5ミリ長くする(ただし、175ミリ以上にするのは稀)人が一定数いますが、その理由にも納得がいきます。ハンドル幅との関連性です。ただ、一時期から有名選手の使用機材が影響し、ショートクランク傾向が表れ、それは今でも続いているようでもあります。それは本人の技術レベルありきですから、一般論としてそれぞれの長さの関連性はあると思われます。

この記事での結論。

クランクをレバーと考え、レバレッジと効率の向上というバランスを試そうと、様々なながらのクランクを試すべきかどうか?という問に対しては、「そこまでは必要ないだろう」とこの記事では結論づけています。

むしろ、そのコストはトレーニングコーチとの契約やコーチングそのものに充てるべきだとしています。なるほど、仰る通りです。

ただ、クランク長を変更することに意味が無いわけではありません。例えば短くすることで得られる特徴に自らをフィットさせ、よりフィットネスを引き出すことができればそれは正解だと言えるでしょう。

しかしながら、パフォーマンスアップという目標を持たない場合には「痛くなければそのままで良い」とも言えるということです。

あるいは既に過度の障害を経験しているライダーにとっては、クランク長の変更がその助けになるかもしれません。ですが、これは自己主観の実験に基づいて行うべきではなく、経験豊富なフィッターや自転車店員が持つ豊富な経験値と知識により客観的な理解を促すべきだとしています。その方が結果的に正しい答えにたどり着く可能性が高いだろうとのことです。


なお、こんな記事もありましたのでご紹介します。
■ 海外のプロサイクリストはクランク長にどれくらいこだわっているのか?→驚きの結果に
http://www.cycle-gadget.com/Professional_Cyclists_Crank_Length.html


個人的な意見としては

単純にどの長さにも慣れると思います。慣れるというのは、無感覚になるのではなく、その長さに合わせたペダリングを習得すべき努力をし、結果得るという感じです。

長くするか短くするかを論理的客観的に理由づけするなら、やはりそこには”効率”が関わると思います。上のリンク先にある動画では選手の脚質まで踏み込んでいませんが、それは関係あるでしょう。その人がその人の身体でする仕事に対応しての道具の一部がクランクだからです。

ゆえ、我々一般ライダーでも身長比だけではなくやりたいことによって決めるべきだと思いますし、今はパワーメーターという解析機器がありますから、そのデータを基にして判断をするということも可能です。

また、ペダリングモニターでは更に細かな解析もできるでしょう。

というわけで、身長165センチの私はクランク長を170ミリから165ミリへ変更することにします(過去に使用歴はありますので、戻すということになります)。理由はピークパワーが落ちた状況下での出力アップという狙いです。

長い文章を最後までお読み頂きましてありがとうございました。
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