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ケイデンスを上げたり下げたり、これはいつもサイクリストの話題になります。「ケイデンスが高い(低い)ですね」と一言言われれば、知識の浅い人ほど困惑してしまうでしょう。しかし、そういった発言をしている人自体、その事について深く考えていないケースが多いので気にする必要はありません。また、ケイデンスというただの数字を上昇させ、目で確認し、記録することに意味はありません。
ケイデンスは車のエンジンの回転数ならば、それが”ただ高いこと”に意味があるでしょうか?
例えば大排気量のサルーンと、小排気量のスモールカー、この両車両が回転数だけを競うようなものです。スモールカーの回転数をいくら上げても大きなパワーが出るとは思えませんし、エンジンへの負担が大きくなるでしょう。
自転車でも同じように考えます。スムーズで、よどみ無く、太いトルクを発揮し、その上で回転数をアップさせることがパワーアップへの道のりです。
例えば、同じ出力を低いケイデンスと高いケイデンスの両方で発揮できる方がよく、どちらか一方でしか発揮できないということはトルク特性が狭いということになり、レースでもエンデュランスライドでもデメリットになります。
下のログは私が31日に記録したものです。FTPの88-92%を15分間、これを5セット行っています。ケイデンスを85rpmに固定して行うワークアウトですが、これを85rpm 、95rpm 、75rpm 、85rpm 、105rpmにセット毎で変更し、トルクとトルク効率を比較しました。
以下は、その結果です。
ケイデンス | 左トルク | 右トルク | 左トルク効果 | 右トルク効果 | 平均ペダルスムースネス | 平均ペダリング効率 | |
1セット目 | AVE 85rpm | 11.7Nm | 10.8Nm | 78.6% | 78.6% | 21.8% | 44.5% |
2セット目 | AVE 95rpm | 10.8Nm | 9.9Nm | 75.5% | 75.3% | 20.0% | 41.6% |
3セット目 | AVE 75rpm | 13.3Nm | 12.2Nm | 81.6% | 81.8% | 23.0% | 47.5% |
4セット目 | AVE 85rpm | 11.7Nm | 10.8Nm | 78.7% | 78.9% | 22.0% | 45.1% |
5セット目 | AVE 105rpm | 10.1Nm | 9.3Nm | 72.9% | 72.9% | 19.1% | 37.9% |
私にとっては85がちょうどよく、95でも可能ですが、75まで落とすと筋肉への負荷が上がり、より高い出力を発揮することは難しくなります。
ここで言いたいことはどのケイデンスが最適化ということではありません。それはそれぞれの人、状況、目的によって異なるからです。ローラー台でのトレーニングにおいては、どうしても同一ケイデンスでのペダリングになりがちです。出力がいくつであっても同じケイデンスという人もいると思います。私の経験上、ローラーよりも実走行のほうが心拍数も上昇しやすいので、ケイデンスを自分の気持ちいい所にだけ置くことは避けるべきだと思います。それは運動時の主観的負担度である自覚的運動強度(RPE)を低く保てますが、トルクの幅は変化しません。
いつもと同じ出力やワークアウトをいつもと異なるケイデンスでやってみましょう。
そして、その際にケイデンスの上昇に伴ってトルクの値が大幅に低下しないようにしたいものです。ペダリングを変えることと同じく、これらは”意識だけですぐに変える”ことは出来ないでしょう。大目標であるパワーアップを目指す過程において必要なことです。
その為には出力だけにこだわらず、まずは低い出力から低いケイデンスでペダリングする際にしっかりトルクを発揮できるようにし、その状態で”スカスカしないように”ケイデンスを徐々に高めましょう。
ロードでは橋の登りのような短い上りで、軽いギアに入れ、やたらにクルクルと回す様子がよく見られますが、そのままでは効率は上がらず、早く走ることも出来ず、集団からあっという間に置いて行かれてしまいます。
シクロクロスでもスタート直後のストレートで3−4秒はいいものの、その後はギアアップしないと集団内での位置取りをどんどん下げてしまうでしょう。
お間違いないようにしてほしいのは、ハイケイデンスが悪いわけではないということです。その状況によって最適は異なりますが、どれを発揮するか選べないと何も出来ずに終わってしまうということです。
ちなみに、トルクをNmで表示することが出来るのはパイオニアペダリングモニターと同社のサイクルコンピューター(SGX-CA500)を組み合わせた場合とSRMを使用する場合、あるいはConnect IQに対応したGARMINで可能です。