LSDが必要な本当の意味 〜ペダリングの深い話〜

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今回のネタはものすごくディープで変態的です(笑)

この手の話が好きな人には、何回かに分けてでも読んでみてほしいと思いますが、楽しく走れればいい!という方は読まずに忘れて下さい(笑)

以下は、私が何年も前から考えたり実行したりしたことの過程をできるだけわかりやすく書いたものです。わかりやすく書こうとするあまりどうしても文章が長くなったり、言い回しが複雑になってしまうのですが、その点はご勘弁下さい。

願わくば、「もっと上手く速く走りたい」と思う方にとって、ご自身を違った視点から見つめるきっかけになることを願います。


「宮澤崇史のプロの理論でカラダを速くするロードバイクトレーニング」にはこう書いてありました。
以下引用、
「最近ではLSD不要論もありますが、私は絶対に必要だと思います。しかし、その理由はよく言われるように「有酸素能力の基本だから」というものだけではありません。
〜中略〜
LSDとは身体の使い方を学ぶためのトレーニングです。
〜中略〜
正しいフォームを知らない人が、高強度のインターバルなどを行えるはずがありません。その意味でLSDとは、サイクリストとして最も基本的なトレーニングなのです」

これを最初に読んだ時には、あまり理解できませんでした。以前から、LSDとは「とにかく長く走るんだ」と”言い聞かされていた”ので、あまり力まずに長い時間走ることに主たる意味があると思っていました。その結果、代謝機能がアップし、スピードが上がるのだと思っていたのです。でも、それを手にした人を見かけないのは何故なんだろう?とも思っていました。

結果として得たのは疲労でした。
長い時間走ると疲れがたまります。疲れを得る代わりに速くなるのではあればよいのですが、実際の効果はそれほど多くありませんでした。むしろ、内臓が強くない私は疲労を蓄積させ、筋肉を減らし(確かに軽くはなったのですが)、一時的なピークしか迎えることが出来なかったのです。

それからしばらく、LSDを封印。短時間高強度へとパターンを変えます。
今までやっていなかったことをやれば、伸びしろを感じて成長をします。しかし、それを食いつぶせば、また停滞がやってきます。身体のシステムとしては筋収縮を速く激しくすることで出力を得ようとしました。結果として筋肉は疲労と回復を繰り返します。精神的にもかなり疲労します。やりすぎてしまい、それほど大きな出力を出せる状態にまで回復させることができず、中途半端に行ったりもしました。結果として、筋肥大効果は小さく、筋肉の代謝を上げることが出来たものの、すぐに天井が見えてきました。

何をすればいいんだろう?
LSDはやった、短時間高強度もやった、他に何をすればいいんだ?と悩んだ挙げ句、とりあえずのんびり走ってみることにしました。スピードはのんびりですが、フォームはしっかりさせました。ストレングストレーニングを取り入れ、トレーニング量もピリオダイゼーションをしてコントロール、週に1度だけグループライドで高強度トレーニングを取り入れました。トレーニングに強さより頻度と質を求めました。

ストレングストレーニングの効果は絶大
”過負荷の原則”です。普段のライドで、しかも長時間になればなるほど、「過負荷をかけてはつかれるから大変だ」となります。つまり、ロングライドでの筋成長はありません。一方で”もがけばいいんだ”となりますが、自転車の上でもがくことで筋肉痛を起こすほどの効果を得られるでしょうか?難しいと思います。どちらかというと筋持久力向上に役立っているでしょうが、過負荷は与えられていないと思います。回数を増やせばなおのことです。
ストレングストレーニングは筋肥大を主目的にしますが、正しい動きを体に覚え込ませることもまた大事な目的です。むしろ、これを無視してしまうと筋肉を使うイメージを悪くしてしまい、よくいう”筋トレは悪だ”という方向に向きます。例えば、重たいものを挙上しようとした時、それを持ち上げたり安定させたりするのに力みが起きます。自然な姿勢を妥協して、トレーニングのための姿勢を取らざるを得なかったりします。

筋トレと言わない
ファンクショナルトレーニングとは言葉通り「機能」を向上させるためのトレーニングです。最小限の負荷をかけ、出来るだけ多くの関節を用いて効率的に動かします。アスリートの場合には「身体の軸がブレないようにしたい」「下半身を安定させたい」「下半身から上半身まで連動させて使えるようにしたい」など、向上させたい機能の目的が明確であるため、いかに効率的に動作を行うことが出来るかを考え、トレーニングを行っていきます。これは筋トレと対峙するものだという意見も目にしますが、違うと思います。大事なのはイメージすることです。自分がやっているスポーツでの運動をスムーズに行うのだという目的が伴えば、それはファンクショナルトレーニングであり、目的を伴わず単に”身体をデカくしたい”などと考えたものが筋トレだと理解するとわかりやすいと思います。私もストレングストレーニングをする際に、ここまで考え抜いていたわけではないのですが、動きの質を高めるという目的において大事なのは挙上する重量ではなく、機能性を重要視していましたので、その結果として考えられたことでした。

最も多くの時間をLTRに割いた
LTRはLT(L4)で走行するメニューです。常にLTなのではありません。この強度で走行できる時間は長くて15〜20分です。回数は一度だけにしました。回数を増やすと、疲労してペダリングの質が下がり、結果として出力維持ができなくなってしまうからです。ですから、1度のLTをに集中させました。また、トレーニングの大きな目的を代謝機能アップではなく、スキルアップとしました。そう考え、疲労しきったまま走行することを無意味としました。

結果的にLTでの上手なペーシングのために必要だったのは、テンポ(L3)でのペダリングであり、エンデュランス(L2)でした。
これまでの私はエンデュランスでは3時間以上走ることが出来たのですが、テンポになると疲れてしまいました。地脚がないという感じでしょうか?しかし、私には長い時間のトレーニングを消化し続ける体力も気力も回復力も備わってはいません。あるのは、しつこいくらいに考え直す神経質さだけ(笑)だから、テンポレベルでのペダリングスキルを上げよう!と目標を立て、如何に落ち着いて、意図的な筋収縮を起こさず、体全体のシステムから内的な力を出力し続けるかということに集中しました。わかりやすく言えば、身体をうまく動かすという感じです。ただ、そのきっかけは体の末端ではなく中心としました。芯がしっかり安定するように、毎晩寝る前に身体を解す時間を作りました。

感度が大事
大事なのは体を診ることです。体の動きを感じることです。がむしゃらに動かしてはいけません。骨盤底筋にテンションを掛け、腹圧をかけ続けることに慣れ、腰を安定させます。その上に乗っている上半身は、しっかり解して動きの自由度を発揮させることでより高い出力を生む為に脚との連動を図ります。これをせず、単にエンデュランスより強く筋収縮をさせることでのテンポが以前やっていた方法でした。違いは明らかでした。ただ、日によって体のコンディションは異なるため、解れていない時には筋収縮を意識しないと出力が出ない場合があり、結果として肩や腰に疲労感や痛みを伴います。テンポでスムーズに出力できれば、あとはグリコーゲンの枯渇さえ防ぐことです。

土台の上にこそ家が建つ
テンポはまさに土台です。ここをスムーズに、身体へのインパクトを小さく出力発揮できてこそ、その上でにVo2MAXという家を建てることができます。昨年までの方法でVo2MAX(L5)走行をした場合、時間と回数を重ねるほどに筋収縮の速度が遅くなり、それによって出力が得られなくなるという結果になりました。これはFTPテストの際にも現れていました。5分10分と時間の経過とともにケイデンスが低下したり、筋収縮の速度が遅くなり、脚が重たくなってしまったのです。エンデュランスやテンポでのペダリングの質が、その部分に寄与します。

結局はLSDをしていたのではないか?
廻り廻って、結局私がやったことはLSDをだったのではないか?と思っています。ただ、LSDという言葉とはちょっと違う感覚です。むしろ、この言葉の普及は控えたほうがいいという思いは変わらず、LTRに置き換えるべきではないかと思います。また、継続時間に拘るのをやめたほうがいいと思います。「1時間しか乗れない」と考える必要はありません。1時間しか乗れなければ、それで出来ることをすればいいのです。そもそも、私の場合にはフォームが未完成であり、代謝機能が弱く、疲労回復機能も強くないために、2〜3時間もの長いトレーニングに耐えることが出来ませんでした。今思い返せば、常に疲労状態で過ごしていましたし、1度のライド中(練習中からすでに)に燃料切れを起こし、ヘロヘロになって帰ることも珍しくはありませんでした。
これは今も同じです。たまに長い時間走ってはみるのですが、明らかに体調を崩したり、疲労と溜め込んだりします。パワーデータの面でもそれを裏付けられました。これは普段から乗っている時間と強度に対して、一度に乗る時間と強度の限界を超えてしまったということの現れだと思っています。つまり、LSDを3時間も走って意味があるようにするには、身体そのもの(つまりフィジカル)が強いか、あるいは徐々にそれだけの時間走れるように積み上げていくことだ必要だと思います。前者ではない私ですが、後者を実行する時間的な余裕はなく、どちらも出来なかったというのが、自分が出した結論です。

量より質
今の所の私の中での結論は量より質です。距離を求めるあまり、TSSを稼ぐことを求めるあまり、逆になってしまいませんか?今行っている方法で伸びている実感があれば、それは個人にとって有効なのでしょうが、そうではないのであれば別の価値観へと移行することを試してみてもいいと思います。簡単ではありませんが、現在行っていることを継続した先に大きな未来が描けるかどうかが、その決意の源になるでしょうか。パワートレーニングを開始した当初、量をこなすことを考えていました。それがパワートレーニングとして意味があると思っていました。しかしそれが私の誤解だったようです。なりたい自分に対してそのようなアプローチが必要であればという条件を忘れていましたし、自分にとって得意なことと不得意なことや人間としての力の限界にもあまり触れていなかったと思います。「やれば誰でも出来る」と信じるのは良いモチベーションでしたが、自分の出力を他人と比較した際の開きの大きさには、「これで本当にいいのか?」という疑問は常々ありました。

レーサーではないけれど
ここまで考えて、コストを割いて、「あなたは何になるの?(笑)」と笑われているかも知れませんが、フィットネスを上げて生活の質を上げることが楽しみの主目的なので、パワメーターとのにらめっこは私のとって大変楽しい時間です。

ここまで長い文章を読んでいただいた方、ありがとうございました
今後共、色々なヒントになる事を書いていきますので、面白いと思って頂いた方には是非店頭にも足を運んで頂き、直接お話できることを願っております。