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「過渡期」とはTime for change、「ある状態から新しい状態に変化していく時期」という意味の言葉です。過渡期の類義語としては、転換期、あるいは変革期などもあります。対義語としては、安定期や最盛期などがあります。
文章の内容として期待されるのはブレーキ論争かも知れませんが、今回はそれではありません。「Eバイク」の方であり、Eバイクを通して自転車全体の価値変化について、です。
あまり難しいことを長々と書くつもりはないのですが、どうしてもある程度の文章量にはなってしまうので、ご勘弁ください。
目次
何(どの自転車)を買うかは”何をするか”でもある
欲しい物を買うのが良いと思います。動機は見た目やかっこよさでも良いと思います。一方、道具は目的に応じて買うということも、選ぶ際には必要なことです。ご自身の希望する姿、目的、像をイメージして、それに適した機材はどういうものかとも考えてみることをオススメします。
海外ではEバイクの波がドンドン来ている…
2021年くらいに激しく動くと見られていた部分が2020年に前倒しで来ている感じがあり、2022年頃には新しい波であるEロードが本格的に始まろうとしているように思います。
9月から10月にかけて、新しいEロードがSCOTTとORBEAからリリースされました。いずれもハブドライブタイプ、低トルク(45Nm)、少バッテリー容量(250Wh)で超軽量という仕上げになっており、Eロードのトレンドはそのあたりが中心になってくるのか?というところ。ORBEAはフルサスMTBにはSHIMANO STEPS、EロードとEグラベル・エンデュランスにはFSAを使ってきています。各5車種ずつくらいありますので、一気に攻勢を仕掛けてきた形となり、Eバイクメーカーへスイッチしそうな勢いです。なお、シマノもEロード用のドライブユニットを開発いているのは間違いないと思います。FSAのFSA HM1.1ハブドライブタイプを実質的に開発したマーレは、ロード用の低トルクミッドマウントドライブユニットをもすでに量産体制に入っており、あるメーカーに3年間で100万台以上も供給がされると報じられてもいます。
しかしながら、低トルクとなるとSTEPSやBOCSHの上位機種と比較する場合、E-MTBに斜度がきついほど登坂速度で競り負けるので、”ロード型である意味”はどのあたりになるのか?と問い正す必要がありそうです。24km/h(EUでは25km/h)を越えて走る時間が多くなるコース設定の場合にはEロード有利、24km/h以内で走る時間が多い場合にはE-MTB有利となるでしょう。つまり、Eロードを選ぶ理由は自分の体力でカバーできない範囲の距離やコース設定をクリアしやすいという点になるでしょう。また、自分では出せないスピードで坂を登ることは爽快で楽しいことです。
「重たいなら売れないでしょ」と一蹴されることが多いEロードですが、居住地域から山岳地域が近いか、あるいは登坂が好きなロード乗りからすれば、STEPSほどの速度で登れないものの、今と同じくらいか、それ以上の速度を一定で維持しつつ、ちょっとラクして登ることができるEロードというのは十分に価値のあるもののはずです。このあたりの機種を買うために必要な予算はおおよそ50−60万円以上となります。
「ええ!高い!」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、例えば、REACTO 7000-Eに54万円出すことを考えるならば、予算的には”アリ”だとわかります。Eロードでも軽量化する方は現れますが、概ね必要性はかなり低いものです。ほぼ自己満足でしかないでしょう。それに対して、もしREACTO 7000-Eをさらにアップグレードさせるための予算を組むならば、Eロードの方が相対的に安くなります。平坦ではバイクの重量はほぼ関係なく、登坂になれば、150万円を費やして5kg台のバイクを作ったとしても、私のようにあまり速くない人が乗った場合にはEロードの方が速いでしょう。軽いから速いのではなく、速い人が概ね軽いものに乗っているということだと思います。
Eバイクは自転車ではないという人もいます
こういう考えは、業界関係者やショップ経営者にも多くいまして、「あれは自転車ではないから、そう思えば納得できる」などと言います。「自分が売るものではない」と考えているのか、あるいは”聖域”を守るという意識なのか、単に興味がないのか…。「自分の力で漕ぐのが自転車だ」というのがその理由のようですが、やはり”実際に乗ったことがない人”の意見だと言えます。楽しんだことがなければ、それの魅力はわからないでしょう。人間の想像力は実際に経験したことの組み合わせや僅かにそれを超える程度までしか及びません。
Eバイクも自転車である
乗ってみるとわかりますが、明らかに自転車です。漕がないと前には進みませんので、明らかに自転車です笑。”ゴリゴリ漕ぐのが好きな人”からすれば、”今は”全く興味がないものかも知れませんが、乗ってみるとその楽しさは感じるはずです。かつてないくらい速いスピードで登坂できたり、体力が尽きることを考える異なる自由なコース設定ができたり、メリットしかありませんし、自転車というアクティビティから苦しさを全て取り除けるのがEバイクです。実際に、私も楽しんでいますし、ロードに乗る時間は減っていません。
”自転車で行ける程度”の行動範囲が自転車の価値を左右する
「自転車に乗って走るのはせいぜい都内だけ」
「そんな遠くへは行かないから」
と仰るのは、体力を心配してであれば、Eバイクにすることで無限大に広がります。
つまり、行動範囲に拡がりがないから、そんなに高い値段は出せず、出した意味もないと考えるのは普通のことです。しかし、クルマやオートバイではそのように考えないだろうと思います。
メンタルが落ちること無く、体力も尽きること無く、ドンドン遠くへ、色々な場所で自転車を活用できます。都内であっても、麻布、谷中、上野、神楽坂、茗荷谷など、自力で行きたいと思わない地域もあり、むしろそういう地域にその時に楽しめるスポットが集中している場合もあります。つまり、都内でも楽ではありません笑。川も多く、橋も多く、真夏や真冬は大変です。Eバイクならば、場所も季節にも影響を受けず、自転車の利用機会をドンドン増やすことが出来ます。結果的に10万円程度出してクロスバイクを買うよりも、もう10-20万円出してEバイクを買うほうが有効に活用できるでしょう。
なぜ、ロードに乗っている人が多いのか
「でもみんなロードに乗ってますね」と思うでしょう。それは数年前までは選択肢が少なかったからです。Eバイクもまだまだ一部の方が楽しんでいるだけです。かつてはロードバイク、クロスバイク、MTB、ミニベロとこのくらいの選択肢しかありませんでした。しかし、今はそれぞれが更に細分化され、自分にあったバイクを選びやすくなっていますが、それぞれを楽しんでいる案内役が不足しているため、結局多数が醸し出す雰囲気とイメージに流されて選択してしまうケースが続いています。それが正解ならいいのですが、少なくともそうではないケースも見かけますし、上の4つ以外の選択肢を知らずに買われる場合もありそうです。
もはやEにならない自転車はない?
Eバイクジャンルの中で中心はEロードではなく、E-MTBなのですが、それはさておき…。ある一定以上のコストの自転車がEバイク化しない理由がなくなってきています…。まさかと思うかも知れませんが、本当にすぐそこまで来ています。もはや、ヨーロッパメーカーの自転車カタログの中身を見ますと、掲載されている車種の半分がEバイクです…。2020年時点でMTBとシティサイクルはEバイク化がほぼ完了しており、今後はロードとそれ以外の車種にも及んでいくものと思われます。
3-5年後を見据えた自転車選びをオススメします
今欲しいものも大事ですが、せめて3年後くらいまでは予測して買ったほうが良いと思います。今が楽しければいいのは若いうちだけで、私のような初老は5年くらい先まで考えてしまいます笑。どんどん買いたせれば良いでしょうし、体力も気力もドンドン増すならば言うことはないのですが、いずれもそうはいかない想像をされるケースが有るかと思います。そうなりますと、このタイミングで買う自転車をどれにするか?ということを考えてみたほうが良さそうではあります。
「自転車で色々なところへ行ければ良いなあ」と考えるのは容易ですが、実際に行うにはまず体力を養うことから始まるので、実際に旅を作るのは半年以上あとかも知れません。また、一ヶ月丸々乗らない(運動から遠ざかる)期間が出来てしまうと、また練習をやり直すことになります。これは自転車購入後に待っている現実です。
さきほど、Eバイクの拡大期に突入したと言いましたが、数年後を見据えた場合、”50万円前後のコストを支払ってまでアシストのない自転車を買う人が減る”と思われます、少なくとも欧州では、です。ただ、これ結構近い未来です。
ゆえ、私は接客時に3−5年先を見据えた目的設定や用途を鑑みた、自転車選びや遊び方の提案を行っています。場合によっては、10万円のクロスバイクより、30万円のEバイクの方が中期的に多くのベネフィットを生み出し、結果的に良いコストパフォーマンスを発揮する場合もあります。
より軽いバイクからより楽しむバイクへ
これまでは自転車を軽くすることは、登坂時には正義でした。それはカッコいいことであり、威張れるものでした。バイク全体の軽量化に罠があるのは確かなんですが…、間違いではないのでそれを否定するつもりはありません。しかし、Eバイクはどんなに軽くしたロードバイクを手に入れた場合よりも、圧倒的に早くラクに楽しく登れてしまいます。150万円で5キロ台のロードより、40万円台で20キロあるE-MTBの方が急坂ほど速いのです笑。「坂は自分の力で登るからこそ行く意味があるんだ!」と言えるのは今のうちだけで、9%以上の坂を時速15キロ以上でスイスイ登る際に味わう風や次々変わる景色の流れ方は誰にとっても楽しいと思いますし、もはや自力で登るより何倍も楽しいので、”ヒルクライム=Eバイクでやるもの”と意識が変わることでしょう。実際、つまらない事は止めますからね笑
平坦ではどうでしょうか。24km/hを超えればロードのほうが速いのは、先に書いたとおりですが、そこまで速度を追い求める方は多くなく、むしろ安定してどこでもラクに楽しく走れる方を選ぶ方が多いだろうと思います。無邪気に行動範囲を拡大できる魅力は絶大です。登坂でEバイクに追い抜かれながらも、苦しい思いをして楽しむのは私のような変態ガチ勢だけで笑、普通の人が買う自転車はほぼほぼアシスト有になろうかというシナリオは現実性のあるものとなり、また”軽さへの過度な憧れ”は過去のものになろうとしています。
結果として、より多くの方が自転車を楽しめるようになるだろうと思います。たとえ、ロードバイクを買う人の多くがEバイクを買わなくても、ロードバイクに乗ることが出来なかった方の方が圧倒的に多く、それらの方は「Eバイクなら楽しめそうだ」と息巻いています。
今回はそういう意味での”過渡期”にあるということを書きました。
お気に召さない方もいらっしゃるかとは思いますが、実際に起きていることなのでご勘弁ください。
きっと、日本でも同じことが起きます…
かつて多くのマウンテンバイカーは、「Eバイクなんて要らない」と言っていましたが、今はもう夢中です笑。
「あれは自転車じゃない」
「ラクしたいわけじゃない」
「重たいから要らない」
「運動にならない」
と言っていたのは過去のことです。
そして、今後起きることを象徴するのはSCOTT Addict eRIDEのPVでしょう…笑
主人公「神父様、私は罪を犯しました。祝福を。私は何年もの間、抵抗してきました。私はそれに決して触れないだろうと信じ、私のためにはならないと言い聞かせてきました。しかしそれは…」
神父「落ち着きなさい。どうしたのですか?」
主人公「友人の誘いに乗り、一度だけ試してしまったのです。一度だけ。ただ、長くはありません。ほんの少しだけです。でも、それは素晴らしかったのです…」
神父「それは何ですか?」
主人公「私は、まさか自分がそれを望まないだろうと思っていたのです。なぜなら、それは私を遅くするだろう…、弱くなってしまうだろう…と。でも、それでもそれは…」
神父「どうぞ、続けて、言ってしまいなさい。」
主人公「私は今それに夢中になっています。私は恥ずかしいです。神父様、お願いします。私に祝福を。」
神父「私はあなたの正直さに感謝します。私達は皆、あなたがどれほど懸命にトレーニングをしてきたか、よく知っています。しかし、あなたの罪を赦すためには、あなたは自分のルーツに戻らなければなりません。ヒルクライムを10本するのです、最もハードに。」
〜夢から覚める主人公〜
主人公「10本だって?それは明日やるよ。今日は…20本登るさ。」
まとめ
私はEロードをプッシュしているわけではありませんし、SCOTTをプッシュしているわけでもありません笑。まず、Eロードをどのメーカーも作ってくるでしょう、ということです。(それらがどのくらい日本に導入されるかは別問題ですが)
今後起き得る近未来予測と、もう起きている事象に対して向き合って、それらを加味してお話しており、選択肢として様々な提案を差し上げています。
それでも人力にこだわるか、あるいは新たな楽しさを見つけるか、どのくらいの予算でどんな楽しみ方をするかは色々な方法を選べる時代に突入しようとしています。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
今後の自転車での楽しみ方を、薄く広く笑、楽しく!提案して参ります!
この週末もそこそこ天気が良さそうですので、ご来店をお待ちしております。