[コラム] 再整備の要望が増えています

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自転車を大事にしていただけるようにと願いをこめて

ここ最近になり、以前よりもしばらく乗っていなかったロードバイク、クロスバイクなどの再整備をご依頼いただくことが増えているように感じます。

コロナ禍における(さすがにそれも終わったと思いますが)移動手段の変化によるものも、引き続きあると思います。それに加えて、コロナ太りの解消に向けてもう一度自転車に乗ろうと思う方が、増えているように思います。ひとことで言えば、健康のためといったところでしょう。

その際、これまでであれば新しい自転車を購入して心機一転!というモチベーションアップの方法も検討できたところです。しかし、現在の自転車在庫における枯渇状態からそれが実現できないために、これまで乗っていた自転車を再度整備し直すコストをかけようという決心をする方が増えているのだと思います。

どのくらいの費用がかかるのか

自転車を整備するコストは、なんとなく1−2万くらいと考えてしまいがちなのは、少し前まで低品質の自転車をそのくらいのコストで買うことができたからなのでしょうか。実際にはなかなかそういうわけにいきません。使用し続けている限り、年間5千円〜1万円くらいの維持費をかけるべきところを放置してしまえば、整備不良に至る箇所が蓄積されてしまいます。ここ最近はコロナ明けの影響により、パーツのコストも1−2割上昇しており、再整備に必要なコストもそれに伴って上昇しています。しかしながら、再度使用する、あるいは使用し続けるにあたっては、“使って分だけ整備すること”は欠かせません。このブログで何度も書いていますように、“歯磨き“をしなければ、いつか虫歯になり、歯を失ってしまうケースも考えられます。

プランは大きく2種類あります

ぼくは整備する際のプランを2つ提案しています。それを歯科治療に例えると、以下のようになります。

プランA:自分で虫歯だと認識している箇所だけ治してほしい
プランB:自分で虫歯だと認識している箇所だけではなく、安心して、安全に、美味しく食事をするための口腔環境をつくりたい


この2つのどちらを希望されるでしょうか?

歯の場合と違い、自転車では使用者自身が痛みを感じません。ゆえに、虫歯であるという認識を自ずから感じていただくまでは、そこに治療(修理)が必要であるという認識を使用する方とぼくが合意できる可能性は低くなります。しかしながら、使用者ご本人も心のどこかでは「ちょっと心配だな…」と思っていらっしゃるのだと思いますし、壊れそうな箇所があるかどうかや、使用する自分自身や道路を利用する他の方の安全が脅かされる可能性がある場合には、知らせてほしいと思う方も少なくないと思います。

歯を治療せずに歯を失っても、それは自分の責任だけでなんとでもなります。隣に座って食事をする人には、もしかすると口臭の心配などあるかも知れませんが…、基本的には影響がありません。しかし、自転車の場合には、公共空間で使用する関係上、その瞬間に同居する多くの方に影響を与える可能性があります。その点をご留意いただくと、「心配だな」と思われるだろうと思います。

どちらが多いのだろう?と気になる方にお伝えすると、多くの方はプランBを選択いただくことが多いです。そこまで自分の自転車はどうでもいいと思う方も多くなく、また公共性に関しても無視できないと考え、それこそ安全に関して気にしているからご来店いただくということが多いからでしょう。

大事なことはきっかけ作りと目的

クルマには車検という制度があり、少なくとも他の道路利用者にできるだけ影響を与えないように考えられています。無理に修理させるというより、自分のクルマに責任をもって管理させるための制度だと考えることができます。クルマに車検があるのは(一定排気量以上のオートバイにも)、クルマという存在が道路を利用する道具の中でもっとも強く、人を死に至らしめる可能性が高いからであり、実際にそれが原因となって人が死んだり怪我をすることが起きたからでしょう。

自転車においては、クルマにおける車検のような制度はありません。ぼくも一時期はあるべきだと考えていたのですが、今は一人一人の使用者の責任において管理すべきだろうと考えています。理由の1つはコストで、2つ目はシンプルに無理だからです。そもそも雨晒しだったり、自分で整備することをしないがゆえ、朽ちてゆく速度が早すぎて制度を作ったとしてもそれを負わせるのは無理でしょう。

そうなると、どうにか一人一人の倫理観や責任感に頼るほかありません。とはいえ、自分が楽しむ目的以外に、そこそこ大きなコストをかけることに抵抗があるのは普通だろうと思います。

そこで、ぼくは
 できるだけ気持ちよく、
 快適に、
 楽しんで、
自転車を利用していただけるような整備状態の結果実現を提案しています。

“ただ乗れればい”のとは違い、より大きな付加価値を得るためには相対的により大きなコストを必要とします。「少しでも安いほうがいい」という方には受け入れ難いでしょう。しかしそれは、先ほど歯科治療に例えてご説明を差し上げたとおりです。ただ食べられればいい、お腹がいっぱいになればいい、痛くなければ気にしないと自分のニーズに対して見て見ぬふりをするのではなく、より安心して、安全に、美味しい食事をするために考えることと同じだと思います。美味しい食事は、より楽しい時間を過ごすということです。それはご自身に多幸感を与え、QOL向上にも寄与しますが、自転車でも同じことができます。あなたは幸せな時間を得られます。(なんかここにきて自己啓発感が…笑)

「たかが自転車で何を大袈裟な」と思うかもしれません。しかし、自転車はとても身近にあり、誰もが乗ることができ、かつ多くの地域で利用できるものです。そして、コストも高くありません。熱心なサイクリストの方であれば同意をいただけると思いますが、自転車に気持ちよく乗る時間を作ることは、ストレスを解消したり、運動することで気持ちを明るくしたり、健康な身体の維持に役立ったりします。この目的に対して、いくらかけるか?ということです。

たかが自転車を思わずに

これまでご説明を差し上げましたように、みなさんの自転車をぼくのエゴや趣味性で整備しているのではなく、あくまでも使用する方が自転車との関わり方をより良いものにして頂けるように願い、ご納得いただける説明を差し上げた上で、お互いの合意のもとに整備を承っております。

「それも高い値段を出させるための言い訳だろう?」まあ、そうかもしれませんし、そうではないかも知れません。理由や意図はどうでも良いのです。目的はご自身の自転車をどうするかであり、サイクリングをより楽しみたいかであり、それを誰のどのような作業によって担保されたいかだからです。

繰り返しになりますが、プランはAもBもあります。いずれも承ります。ご来店頂いた際、自転車をお見せいただき、その自転車で実現したい内容に応じて、どのように修理や整備を行うかを一緒に相談しましょう。

ご来店をお待ちしております。