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迷子になろう
ぼくがEバイクで走るときのポイントは、前回も書いたとおりで、ゆっくりと路地をウロウロすることです。計画的なサイクリングも楽しいですが、何のあてもなく、単に直感と気分に素直に従い、ウロウロと散歩すること、つまり迷子は楽しいのです。
迷子といっても、全く何があるのかわからない状態ではなく、ある程度の地理感を頭に入れておきます。ただ、なんとなくです。こっちに行くと秋葉原かな?ということはこっちは蔵前かな?とかその程度でいいのです。理由は最終的になんとなくたどり着きたいエリアに行きたいからというのが一つ、もう一つの理由は自分が好きなスポットがある場所に行きたいからです。人のはそれぞれ好みがありますし、時間を無駄にしすぎない程度の迷子がおすすめです笑。
だんだんと鍛えられる”迷子力”
ぼくはそれを迷子力と呼んでいますが、きっと以前に同じように言っている人がいそうだなとは思っています。調べてませんけど。迷子力とは、その街の雰囲気をなんとなく感じて、そこにどんな物がありそうか、あるいはすでにもっている知識とつなげることができるか、総合的に今いる場所を楽しめるかどうかという力のことです。最適なルートを導き出すのではなく、なんとなーくウロウロするうちに目的地周辺へ行くことができ、なおかつ自分好みのスポットにも出会うことができる力のことですね。
まあ、途中でスマホを取り出して現在位置や周囲の様子を確認するのですが、”地図にはないなにか”に出会えるかどうかが問われるです!(何故か力をいれて笑)
ぼくが使っているGoogle Mapというものは、ぼくが普段から検索したりしている内容に従って、興味のあるものを際立たせて表示しています。概ね同じ部分もありますが、細部の地図で表示されるものは、それぞれの人によって異なります。地図に限らず、同じGoogleが持っているYoutubeも同じですが、自分が気に入りそうな内容にしか出会えないようになっています。ぼくはそれだけでは迷子として不足するのではないかと思うのです。東浩紀のいう誤配が足りない。迷子力は、まさに誤解を受け取る力なのです。まあ、自分で送って自分で受け取る感じですね。だから、迷子になる際には、迷子になっている自分と、それをスマホの地図に照らし合わせて客観視する自分がいます。
下谷で出会った素敵なアトリエ
下谷で偶然にであったのか、これも迷子力のなしたものなのか、素敵なレザー小物とアトリエ兼ショップを見つけました。きっかけは、おそらくは会社所有である建物に大きくあった「山藤(やまとう)」という名前でした。明治以後にできたような商店や会社でよくあるのは、山ナントカというネーミングです。つまり、屋号ですね。江戸期にも商店はあったものの、庶民が名字をもてる(与えられる)社会ではなかったため、商店を営むものは自らの出身地の国名を屋号に使うことが一般的でした。越後屋、下総屋、上総屋、山城屋、近江屋、相模屋…いくらでてきますね。その屋号の下に当主の名前をつけて表しました。
明治期にはいり、名字を自由につけることができるようになってから、商店の屋号も一気に自由化。ところが、ある地域には同じ名前の人らが増えてしまい、それらを区別するために屋号というものが登場します。いまでもそれがわかる屋号といえば、ヤマサとか、カネヨとか、マルゼンとか、ヒガシマルといえばわかりますか?ヤマサは「山+サ」、カネヨは「金+ヨ」、キッコーマンは「亀甲+萬」ですね。マルハニチロのマルハもそうですね。
いまでも明治から昭和期の屋号は店名や社名に使われているため、それらしい屋号を見つけたときには「むむむ!」とぼくの観察眼がピークを迎えます笑。
今回の山籐さんが山をつけたのは、素材となる動物たちが山に住んでいるからなのでしょうか?そんな事を考えつつ、いろいろなことを観察すると、一見してドライに見える東京の街も、途端に楽しいものがギュッと詰まった、時代を超えた街の姿が思い浮かんできます。たかが東京ですが、東京はやっぱり楽しい。「東京はなにもない」「平坦しかないからつまらない」「東京は走りにくい」「東京は…」とネガティブに言いやすいのは確かですが、それは言いやすいというだけではないでしょうか。もっとゆっくり、時間をかけてみてみれば、まだまだみ足りないものが山ほど出てくると思いますよ。
山藤さんでは、革製品の中では財布など小物を中心に制作されているようでした。その中にはバッグなどもありましたし、素敵なトートバッグもありました。でも、中心はお財布や小銭入れ、あるいは普段持ち歩く革製品ということです。コードバンやブライドルレザーなど、いろいろな素材を使い、あるいは型押しや染をつかい、男女問わず使えそうな素敵なアイテムがたくさんありました。なんかもう色々欲しくなりそうで、ちょっと危険なお店です笑。ブックカバーも素敵ですよね!
入り口は引き戸、これがいいですよね。そして、ノブにも革。ただ、この引き扉が大きい…。このサイズは標準であるものなのでしょうか?2枚をくっつけたものなの?と、もう入り口から楽しかったです。入り口の外にも、以前使われていたものなのか、工具や道具類が展示してあり、なんとも言えない雰囲気を醸していました。ただ、目的地や先を急いでしまえば、すっと通り過ぎてしまうのでしょうし、時間の余裕がなければ「あ、なんだろう。でも急いでいるし、また来よう」と思ったが最後、もうどこにあるかわからないことも多々ありますので、わざわざゆっくりと、時間に余裕を持って走ることがおすすめですよ。
とっても良さそうな、丁寧につくられた製品がたくさんありましたので、ぜひ直接足を運んでみてはいかがでしょうか。人形町と神楽坂にもお店があるようですので、お近くを訪れた際には言ってみてください。
https://shop-yamatou.com