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無駄の大切さ
先週から自転車屋が他の店主やお客さんとする雑談を録画し、Youtubeにアップしています。なぜそんなことをしているのか。それは、みなさんに自転車屋に来て話すのはおもしろいともう一度気づいてほしいからです。
Wiggle/CRCは倒産しました。スタッフは全員解雇。どうやら、その後にどこかに買われたという話もあります。Raphaはまだありますが、相変わらずのありえないセールの連続。その先に何があるのかといえば、何もないでしょう。
いずれにしても、Wiggle/CRCにしろ、Raphaにしろ、誰が内側で関わるかに関わらず、実店舗で地道に売るということがいかに大切かを表していると思います。やはり、人間同士が商品と貨幣を交換することが大切だということだと思います。単に商品交換するだけではなく、そこで何かコミュニケーションをすることが大切なのだと思います。すぐに買うのではなく、時間をかけて会話し、考えることが大切で、購入した製品の価値を伸ばしていくはずです。また、自転車本体を買う際にもそれはいえるだろうと思います。
Wiggle/CRCが自転車業界に何を残したのか。そう、何も残りませんでした。Raphaも、結局はサイクリングアパレルをかき回した印象が強く残ります。それを、ぼくがずっと言ってきました。
みなさんがWiggle/CRCへ投資(購入)した金額を他に回していたら、いったい何が起きたのか、それを考えても仕方がないけれど、考える必要があるのではないかと思います。
今度は中国系のブランドの台頭が話題になっていますが、それもどうかな?とぼくは思います。そもそも通販で販売を始めたブランドが店舗に卸し始めたりしたところで、結局彼らは店舗を大事にはしません。必要に応じて切り替えただけに過ぎないでしょう。今売れるからと、後乗りしてきたブランドは、苦しくなると真っ先に引いていくことは、過去のいろいろな歴史や経験から学ぶことは容易に可能です。それを鑑みれば、ちゃんとしたメーカーとそれを扱う店にお金を払うことがいかに大切かがわかります。
店に行き、話しを聞き、話しをして、なんとなく”無駄に”過ごす時間がいかに大切だったか。それを取り戻さない限りローカルバイクショップは不要になるでしょう。これは自転車以外でも同じだと思います。Wiggle/CRCが流行っていた際、一部の人々はこう言っていました。「自転車屋に行く必要性を感じない」「困ったときだけ行けばよい」「欲しいものが今すぐになければ用はない」「整備だけして稼げばいいじゃないか」「いずれなくなってしまうだろう」と。
生鮮食品でも、日用品でも、そこに人がいるからこそ、色々な人が便利に利用できる、コミュニティとつながり続けるので、無人店舗や通販やセルフレジばかりの未来はディストピアのようなものだと思います。無駄があるからおもしろいし、いろいろな人が関わるし、関わることができるのだと思います。
雑談の面白さ
以前は、いや、以前はと言うと、はるか昔なのか、それとも10年一昔なのか、それは年齢や時代によって異なりますが、ここでは2000年代初頭くらいに思っておいてください。その時代、つまり平成の時代ですが、今では良くないものの代名詞とされる昭和的なものがまだまだありました。むしろ、平成は昭和の延長線上にあると言ってもいいでしょう。
ネットもあまりなく、スマホもない時代、自宅にPCがある家庭は半数以下でした。その頃の自転車店では、情報を求めにお客さんが来店しました。もちろん今でもそれはありますが、昔とは理由が異なります。昔は買うものを見つけるために店に行き、そこで会話をしました。いや、はじめていった店やそれ以外の店でも、”常連”であったり、”知り合い”のような関係になることが稀なのは今と同じでしたので、ほとんどの場合は店内をブラブラしたり、滞在しているうちに、他の客と店主(店員)が話すをの聞くなどが主体でした。
今では、Googleなどの企業が、自分がスマホで検索した内容を鑑み、それに沿ったものばかりをサジェストしてくれる環境にいます(それを知らない人もいます)が、以前は好むも好まざるも関わらず、耳にいろいろな話が飛び込んできたものです。そこから、まったく知らなかった情報を得たり、関係のなかったジャンルに興味が出たり、さまざまな誤配を得ることができました。
グループライドも同じです。自分が気に入らない環境で走ることに文句をいい、正すべきだといい、”みんなにとって心地よい状態”以外は正しくない姿であると言い過ぎてしまったおかげで、以前のような偶然性はすっかりなくなってしまいました。もちろん、荒っぽい方法や危険を顧みない姿勢を許容するのは難しいと思いますが、正しさばかりが問われてしまったせいで、奇跡のような出会いはなくなったように思います。何かを主張すれば、必ず誰かを傷つけるものです。傷つけたら謝れば良く、それ自体を恐れていては面白い話はできません。相手の言うことに同意ばかりしていては、話は終わってしまいます。「いやでも」「それって実は」と相手のいうことに対して対案を提供していってこそ、会話は続いていきます。AIがプッシュしてくれる自分が気持ちいいと思う内容に慣れすぎてしまうと、外の世界が雑音だらけに聞こえたり、不快なものばかりにみえるのでしょうけれど、そもそも世界は雑多であり、いろいろな人が存在するから面白いのだと思います。同じような人しかいない世界は刺激がなく、すぐに飽きてしまい、面白くはありません。
店の中で店主とお客が喋っていると、それを”常連のたむろし”であり、正しくないと主張することは容易ですが、自分とは関係のない、しかし深い話を聞くのは、ぼくにとってとても楽しい時間でした。新しい発見がたくさんありました。「え?そんなことが?」とか、「まあ、そうだろうなあ」とか、いろいろです。むしろ、雑談が行われないお店は、物があるだけで面白くないと思っています。だって、物があるだけでいいのであれば倉庫で良いのでしょう。リアル店舗はそこにあり、開いていることに最大の意味があるので、そのことと在庫があるかないかを別の価値として認識するほうがいいと思っています。
ぼくはYoutubeに動画をアップしています。そこではやたらと長尺の、まったくカンタンではない動画ばかりがありますw。5分でまとめるとか、10分でわかるとか、そういうものはありません。ぼくはYoutuberになりたいわけではなく、自転車屋だからです。しかし、自転車屋の中にはカンタンさをアピールする動画をアップする方もいらっしゃいますが、ぼくは違います。すぐに分かることに、すぐに買わせること以外の大きな意味はなく、むしろ、長く会話をし、ゆっくり時間をかけて考え、ゆっくり結論を出してもらう方がおもしろいと思っています。すぐに結論を出すのであれば、ネットを漁り、通販で買うほうが早くてラクですし、それと実店舗が戦っても勝てはしません。
松井輪業さんと
まずゲスト回の初回として、栃木県栃木市にあります「松井輪業」の松井さんと2時間ほど話をしています。テーマはグラベルロードとEバイクを中心にし、脱線を繰り返しながら話ました。ぼくらは自転車について何時間でも喋ることはできるのですがw、とりあえず2時間で切っていますw
「おもしろいけど、長いね」とは言われますが、これを机の前で2時間ずっと聞くとは想定しておりません。むしろ、30分では伝わらないことが2時間3時間と話せば伝わるようになります。これをカットして、前編後編と切ることもしていません。”切り取り”は文脈を殺してしまいます。後半で喋ることは、あくまで序章と前半があってこそ。映画のラストシーンだけみても何も残りません。
細切れでもいいですし、時間をかけて見てほしいと思っています。また、お仕事や作業でもしながら、ラジオのように聞いてもらってもいいと思います。偶然入った店で、「何か話してるなあ。うるさいなあ…」という感じですw
定期的にできるかどうかわかりませんが、今後もこういった自転車のいろいろな話をアップしていく予定です。