SILEXで遊んできた2

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いつもの道が違って見える

「いつもと同じ景色なのに、ちょっと違って見える」なんていうことが人間にはありますよね。歩きから乗り物に乗ったり、速度が変化したり、あるいは意識の差であったりもすると思います。SILEXでずっと見慣れたつくば周辺を走ってみると、ロードバイクで走るのとはまた違う気分や景色を味わうことができました。最初は「単に遅いだけなのでは?」と思いましたが、そうではないんです。うまく言葉にできませんが、違うんですよ。緊張感がないからですかね?バイクが非常に安定していて、転びそうな気が全くしないので、余裕をもって走れます。登っていると、ある程度の速度差で追い抜かれたりもしますが、追いかけたいと思わないのが面白いものです。ただ、短パンをはいて、上にはジャージを着ていても、いわゆるロードバイクに乗る人々はぼくの挨拶に答えてくれることはありませんでした笑。MTBのときもそうなんですよね。

不思議な乗り味

何度乗っても不思議な乗り味の「SILEX」。不思議というのは、とらえどころがないとか、ミステリアスなのではなく、いろいろな顔があるという感じの意味です。フレームデザインとしてはロードバイクのように見えます。けっこうかっこいいとも評判です。しかし、タイヤは標準でマキシス ランブラーの45Cなので、全体から醸し出される雰囲気としては、かなりオフロード色強めに見えます。乗ってみると、ロードバイクの良さとマウンテンバイクの良さが本当にバランスよく同居していることに気づきます。複数の性格が無闇に出入りするのではなく、路面コンディションや乗り手の操り方に対するリアクションの中に複数のレイヤーがあるという感じでしょうか。実に楽しいバイクです。

山の中はどこでもカフェになる

この日はシングルバーナーやコーヒーミルを持っていきました。SILEXにはフレームの複数箇所にバッグ類を装着できるように設計されているため、その日のライドをどのように楽しみたいか?であったり、個人のスタイルに合わせて必要な道具を持ち運ぶことができます。さらにSILEXのフレームジオメトリは、バッグを装着してもなお、安定して走ることができるため、乗りにくいと感じることはありませんでした。

山の中で、もちろん火気を扱う場合には十分注意をして、いれるコーヒーというのは、ほんとうにおいしいです。いや、味だけで言えばもっと美味しいコーヒーがあるでしょう。でも、自分で淹れるし、誰もいないところで時間を過ごすということが最高に幸せな時間だと思います。

「バイクパッキング」というと、「テントやシュラフを運んで一泊して」というところまで想像しがちですが、そこまでしなくても、気軽に楽しめばよいと思います。コーヒーがインスタントでもいいでしょうし、カップラーメン1つからはじめてみてもいいでしょう。いつもと違う1日を過ごすために、なにかすればよいのです。あるいは、旅館やホテルに宿泊して、そのために必要な道具を持って行くということも楽しいと思います。ぼくはむしろその方が好きです。なぜなら、食事を作る時間を考えず、たくさん遊ぶ時間を作れるからですね。

それぞれの方がいろいろな楽しみ方ができる、それがグラベルバイクのいいところだと思います。

グラベルはちょっとでも楽しい

「日本にはグラベルは多くない。だから、グラベルバイクは不要である。」という声は常にあるでしょう。「自分は舗装路しか走らない。」という人も常にいます。それはそれでいいと思います。しかし、「いつものコースの脇にあるちょっとした未知のルート」に気づいてしまったとき、あるいはそこを走ってみた場合、「グラベルバイクを買ってよかった」と思うんです。

海外のとある地域の画像があり、それと同じことができないから楽しくないということはないと思います。日本には日本の、わたしたちなりの楽しみ方をしてみたら、その良さに気がつくだろうと思います。ちなみに下の画像は、一応地図状に道として記載されているところです笑。こういうのでいいんですよ笑

選択肢を残す楽しさ

1日に走るルートの中で舗装路が多くを占めるでしょう。あるいは、まったくといっていいほど未舗装路を走らない場合もあるでしょう。でも、その場所での選択肢をもっておけるかどうかは大きな違いです。また、色々なケースで安定して、不安が少なく、恐怖を感じにくく走ることができるのも、グラベルバイクの素晴らしいメリットだろうと思います。「行こうと思えばいつでも行ける」そういう状態にあってこそ、自分にあった楽しみ方をアレンジできるのだと思います。

ロードバイクはピークを過ぎたものの、まだまだ新しく乗りはじめる人がいます。ただ、その中にはロードバイクしか知らない人もいます。ロードバイクを他の自転車ジャンルも経験したぼくから眺めた場合、「選択肢を削っていくジャンル」だと気づきます。何かを足すことではなく、引き算をし続けるジャンルです。ミスマッチに対して抗うように、ロードバイクでのバイクパッキングをする様子もみられますが、基本的には引き算をするためにコストを支払う傾向が主軸にあります。具体的な道具も削ることを考えますし、そのようにすればするほど、その自転車でできることも先鋭化していきます。

それらに対して、MTBやグラベルバイクでは、その人がやりたいことをその自転車で繋ぐといったような、ハブ的な使い方が主軸になっています。もちろん、それらの中でレースジャンルは除きます。いずれの自転車ジャンルでも、レースはレースだからです。ロードバイクでも、非レースな使い方はあるのですが、その部分にあったミスマッチを読み解き、製品として具体化したものがグラベルバイクですから、多くの人にグラベルバイクは求められるのではないかと思っています。やはり、選択肢をいろいろな場面で残せることは、その自転車に楽しむ幅も残してくれますし、逃げ道もあるので利用し続けやすいと思います。

自分だけの景色を求めて

はじめに書いておきますが、「自分だけの景色」なんていうものはありません笑。あくまでもその場所、その時間に、自分しかいなかったり、その瞬間があるということです。ただ、時系列を含めていくと面白くて、景色というのは朝と昼と夕方で異なりますから、同じ景色は二度とないという感じもしてきます。それが砂利道を抜けた先にあれば、同じような地域の景色であっても、他の人があまり見ていないような視界を得ることができるのはおもしろいものです。峠の看板の前でみんなが写真を撮りあうような世界もあれば、人知れず自分だけの景色の中でコーヒーを啜る世界もあるのですから、自転車は面白いし、たいへん自由でよいと思います。