selective focus photography of black rotary phone

コラム [持ち込みメンテは構いません]

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ある日の電話にて

電話にて

「貴店はEバイクについて詳しく、目利きもされて、それを評価し、他店から、あるいは通販で購入し、のちメンテナンスについては貴店にお願いしたいのですが、お願いできますか?」

と質問いただきました。
ぼくは

「購入後が大切だと認識され、心配し、そこまで仰るのであれば当店で買うべきではないでしょうか。」

と回答しました。

おそらく、電話の先では了解してくれることを期待し、それを予め確認するつもりでのことかと思いますから、ギョッとされたことでしょう。

「ふつうのママチャリであれば大丈夫なんでしょうけど、高いものですし、専門的な分野に関わるので予め確認したかった。」

と仰るので、

「いえ、一般の軽快車でも同じだと思いますよ。専門的な分野があるかどうかについて言えば、軽快車は軽快車の専門性がありますし、けっしてイージーな仕事ではありません。また、ぼくらもお客さんもお互いが人間なので、自分との会話に納得し、自分の影響によって、自分と取引してくれた相手と、ハナから他社と取引するけれど、都合の良い時だけお付き合いしたいという相手では、まったく違う会話になってしまうし、サービスの質も当然落ちてしまうでしょうけど、仕方ないと思います。」

と答えました。

「何が違うか、工賃も異なるか?」

という質問には、

「お互い人ですし、何がいくらで、これがあってなくてというように、ぼくらなドライに済ますことができる特殊な人間ではありません。自転車に関することでなくても、ご自身のお仕事についても、会話そのものが変わってしまうということはご理解いただけるのではないかと思います。」

と答えました。

「どうぞどうぞ持ってきてください」 と答えるほうが商売上手だとは思いますが、ぼくは正直に回答しました。人間はそういうふうに考えられませんよね。いつも会っている人、いつも買ってくれる人、たまにしか来ない人、まったく何も買っていない人。ご自身の周りのコミュニティについて考えても、なぜ家族には優しいのかと考えると、家族だからと考えるかも知れませんが、血がつながっていなくても家族は作れます。単に自分が他者を家族だと認識するかどうかの違いだけだと思いますが、そこには信頼があるでしょう。人間は結局、貨幣による対価の発生するサービスをする側とされる側との関係やその継続と実績でしか、信頼を維持できないと思います。ですから、自転車を購入する際に必要な大きなコスト、つまりぼくらにとっての大きな利益を支払わないけれど、お互いの信頼を気づきたいのだが…と言われても、笑顔で承服するというのは、たいへん難しいことだと思います。

「他店持ち込みOK」は、あくまで購入後に発生した事象によって持ち込む店を変える機会のための措置です。これを利用し、最初から誤ったコミュニケーションを開始するのには、あくまでお互いの利益のためにどうにも納得しかねると思いました。