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よく転がるほうが良いのかどうか
先日、SNSでのこんな投稿を見かけました。
「タイヤを〇〇に変更したら、平均時速が〇.〇km/h上がった」
もちろんSNSなので、書いてあることすべてが事実であるとは思っていませんし、そう考える人が一部の人だけだとは思っているのですが、たしかに「タイヤを〇〇に変更すると走るのがラクになりますか?」という希望を抱く声は聞きますから、あながちまったくのレアケースでもないのではないかと思い、ぼくの考えをかんたんに書いておくことにしました。こういう声を信じるのは自由だと思うのですが、「他にとっても大切なことがあるのをお忘れなのでは?…」と思わずにはいられません。
先程の話はロードバイクについてです。ロードに限らず自転車に限らず、タイヤを選ぶ際に大切なことは、抵抗が少なくて速いことではなく、走る、曲がる、止まるが自在にやりやすいことであり、自らのスキルを充分余裕を持って発揮したり、危機の際にもコントロールしやすいことではないかと、ぼくは考えてタイヤを選んでいますし、店頭に在庫したり、おすすめする製品を吟味しています。
同じ動作でも、自らがおかれたフィジカル的なメンタル的な環境によって、希望の動作を完了させることが可能かどうかは異なるはずです。平らなところでできることも、崖の縁に立てばできなくなってしまいます。そして、それは人ぞれぞれ異なり、かなりの差があることもご存知のとおりかと思います。恐怖は人間の体やその動きを硬直させてしまい、制御するのは大変困難です。
また、タイヤは銘柄を選べば同じ性能や特性を発揮するものではなく、それを自分がその時の一瞬と状況下で使えないと意味がないはずです。それを思い知るのはシクロクロスやマウンテンバイクですね。自分と同じタイヤを使っているはずなのに、「なぜあんな動きができるんだろう?」と思うことがあります。タイヤはつけているだけではダメで、使えていないと意味は薄くなります。オフロード競技では得てして、速いタイヤ(つまりよく転がる)よりも遅いタイヤ(つまりよく食う)を使ったほうが速く走れる場合があります笑。
つまり、タイヤを選ぶ際は「これを買うと〇〇が起きる」ではなく、「自分がこれを使えるかどうか」「どう使うか」という感覚でもみておくことが大切だと思います。
オンロードしか走らない人は多いと思います。そんな方でもオフロードを走ってみるとその意味がわかると思いますし、オンロードでも同じことは起きているという感覚を意識するよう自己訂正できると思います。オフロード向けの自転車を持っていない場合でも、ロードバイクで芝生や砂の上を走ってみましょう。いつもと異なる感覚を得ると思います。
太さについて
細いほうが速いですが、速いということは安定さを失うということでもあります。太くなると安定感を増しますが、遅くなるということでもあります。こう書くと、どちらを捨てるかのような考えになってしまいがちですから、細い方に落ち着いたりするケースは多いと思います。
「最近は太いタイヤが流行っている」
という声もありますが、流行っているのではなく、太いほうがバランスが整うバイクに乗る人が増えているというのが事実です。とはいえ、15Cリムなら、19Cリムならと端的に良し悪しで語ることは難しいでしょうから、直接お店に持ち込んで聞いてみるのが良いと思います。
なんでもかんでも太くすればいい感触になるのではなく、当初の設計と思惑から外れないようにするほうが良いはずです。例えば、シクロクロスバイクをロードタイヤに交換してみてもロードバイクのように走らないのはそういうことです。そもそも設計意図が異なるからです。
それから、同じ銘柄の同じ太さのタイヤを使っても、装着する自転車が異なる場合、異なる感触を得る場合があります。さらに言えば、どのリムに装着するかでも異なります。とはいえ、概ねの感触は共通しているだろう?ということには同意しますが、バイク側からみた場合には先ほどのバランスが大切になってきます。そもそも設計意図にないサイズのタイヤを装着した場合、同じ銘柄の同じサイズでも評価が分かれるということが起きてしまいます。
タイヤを太くすると安定性を増すのは確かなのですが、ある銘柄のタイヤのどのサイズを選ぶか?という質問の答えは、合理的な一つの答えになったりしないということです。乗る人と自転車、その上で発揮されるスキル、自転車に対してのバランスなど、いくつもの要素からタイヤについての合理的な選択は異なるということだと思います。
タイヤ選びは難しいとも言えますが、楽しめる部分でもあるので、お店の人とよく相談していろいろな経験から自分自身の答えを考えてみてください。