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一般社団法人自転車協会の「ENJOY SPORTS BICYCLE」の中で自転車ライターとして信頼の高い安井行生さんが、「ロードバイクがすべてディスクブレーキになった理由」というタイトルの中で「ロードバイクの選び方」について12月2日に書いていらっしゃいました。
短くとてもよくまとめられていたおり、みなさんに読んでいただきたいテクストだと思いましたし、それを読んでのぼくなりに書き足しと応答を置いておきたいと思いました。
ロードバイクがすべてディスクブレーキになった理由(sbaa-bicycle.com)
https://www.sbaa-bicycle.com/sbaa_sp/howto/roaderabi8.html
「最終期のリムブレーキ車のしなやかで軽快な走りは今でも好きですが、最新ディスクロードの走りは、文句のつけようがないほど良くなりました。今では所有バイクの半分ほどがディスクブレーキになり、メインバイクもエアロなディスクロードです」
まったく同意します
わかります。ぼくも最終期のリムブレーキ車の軽快な走りは好きです。好きだから、リムブレーキ最終モデルのREACTO TEAMを買うべきだとアピールしました。同じ内容は文章の中で「先述のとおり、僕は黎明期のディスクロードに良い評価を下していませんでした。完成の域に達していた「リムブレーキバイクの最終形」と比べて、走りが未熟だったからです。」と表現されています。
10数年での大変化
これにぼくなりの一言を加えるならば、ぼくと安井さんがそのように感じるのは最終系以前のリムブレーキモデルを歴代追いかけてきたからであると思います。遡れば、スチールフレームの頃、アルミフレームとそのカーボンバックの頃、あるいはカーボンバイクの初期の頃から最終形へと進化するまでのタイムラインを追いかけてきたからでしょう。そういうノスタルジーや思い出が含まれていると思います。以前はメーカーごとの製品が持つクセの幅も広く、個性豊かでした。良い製品もあれば、ちょっと心配な製品までいろいろありました。その中で自分好みで、”大丈夫”な製品を目利きすることが必要でしたから、ショップを介してし選ぶ必要もありました。ハズレもありました。そして最後にエアロロードというハードルを超える必要がありました。いくら積層の変化で乗り味を変化させられるカーボンフレームとはいえ、外形上の影響は少なからずあります。「エアロロードらしい味付け」は個性として読まれるように作文されるケースが多いですが、実際にはそれはバランスが崩れていることを読み取ったものですし、”エアロロードのネガ”と表現されるものです。
リムブレーキ最終モデルはそれを乗り越えていた。たどり着いたゴールの1つとして素晴らしいバイクが含まれていました。それを感じて、ぼくらは「おーここまで来たのか」と感じたのだと思います。現在までの10年についても「わずか10年の大変化」として書かれています。ここでわずかという言葉が使われているのは、それ以前からのタイムラインを含めた文脈であることの証明であり、さきほどのノスタルジーや物語性が加味されているという証明になると思います。
ぼくは以前にも「2012−3年位までの20年くらいの間に起きたことは多段化くらいである」と書きましたし、そこから現在までの10数年で革新的な変化が起きたとも書きました。10数年かけて、単にブレーキシステムが変化しただけではありません。ここがとても大事です。ここを読み飛ばして理解してしまうと、バイアスはかかったままになり、安井さんの文章の意味が伝わりません。ここ最近の10数年でロードバイクは3世代くらい刷新されました。さらに、複数のタイプのMTBも開発するメーカーはより多くの経験からアイデアを生み出すことができましたから、より良いディスクロードバイクを開発することができていますし、グラベルへの造形もより深いことでしょう。
好きと良いの違い
好きと良いの違いを考えます。誰にでも好きなものはあります。好きは信頼と概念として近いものだと思います。人間は好きにではないものを信頼するのは難しく、時間がかかると思います。ですから、メタで見られるかどうかがキーだと思います。食わず嫌いにならず、ポジティブに体験する機会を作り、内にこもらないことが大切だと思います。リムブレーキのままにするにしても「自分は今のままでいい」ということではなく、それはそれで楽しむということが良いと思います。思考停止するのではなく、思考し、受け入れつつも、
安井さんの文章にある、「今のディスクロード」を広く忖度した概念として語らないことが大切かと思います。安井さんもその意図で書いているでしょう。「正直、当初のディスクロードは完成度が高くありませんでした。重量が増してしまうのは仕方がないにしても、走りがもっさりとしたものになったり、快適性が低下したり、ハンドリングに左右差があったり…。」自転車の開発は想像より複雑で難しく、コストが掛かります。そのコストを省けばいくらでも安い格好は描けますが、中身はありません。その違いは乗らないとわかりませんし、乗ってもわからないという場合も表れます。わかっていてもわからない振りをしたり、表現しない場合もあるでしょう。文章では正確に初期と現在と分けて書かれていますが、時系列が今なだけでは不十分であり、今のテクニックと知識とコストが必要であることも書かれていると思います。
今のバイクを買おう
ぼくや安井さんは最終形のリムブレーキモデルを好きであると評価していますが、絶対評価では現在のディスクロードが良いと評価しています。つまり、今からロードバイクを買う方はぼくらの好きをトレースする必要はなく、その意味もあまりないということです。明らかにディスクロードを買ったほうが良いと思います。自転車メーカーの多くは、なぜそんなに苦労してコストを掛けてまでディスクロードを開発し続けてきたのかに関して、「高いものを売るため」「メーカーの陰謀」というアピールがあるようですが、まったくの的外れです。想像力の豊かさに驚きます。「ドライコンディションならリムブレーキでも問題ない」という声も聞きますが、制動力を数値化するならドライ時でもディスク100に対して30〜40くらいです。ウェット時には20未満がいいところでしょう。たまにリムブレーキロードバイクをちょっと乗ってみますが、もはや不安過ぎて楽しく感じません。
安井さんが書いているようにもっとも大きな理由はISOによるものです。ですから、大きくてまともなメーカーは主要モデルからリムブレーキの車種をなくしました。「どちらか好きか」という話ではなく、「ディスクで行くしかない」ということです。小さなメーカーは販売数が少なく、ポリコレ全盛期の現在であってもそのあたりに責任を持たないふりをしても許されてしまうというわけです。決して、ドラスティックに変化しないことを選択したメーカーがユーザー想いなのではありまえん。むしろ、逆だとも言えます。
そのような背景もあり、実感も伴って、わざわざリムブレーキモデルをもっと作るべきであると考える自転車関係者はほとんどいないと思います。リムブレーキモデルでは、どう頑張っても28Cくらいまでのタイヤしか使えません。それは古いレース基準の機材を発端にしているからです。かんたんに言えば、少なくとも約15〜20年弱前のレース仕様です。しかし、ぼくも含めてロードバイクで楽しむのはレースではないはずです。以前ならば、そのミスマッチを認めつつも”気合でやり抜く”ということでカバーしてきました。事故を起こさずやりきった人だけが楽しむことができました。安井さんがディスク化が進んで理由の3つ目で説明している通り、いろいろな種類のロードバイクが生まれました。つまり、それぞれの人の目的に合わせて最適化されたロードバイクを選ぶことができるようになりました。
それなのに、わざわざ古いレース仕様からロードバイクを始める理由がありそうでしょうか?おそらくないと思います。あるのは、ぼくや安井さんのようにその頃の思い出に浸りたい人だけなのでしょうし、そのぼくらですら現在のバイクの乗りやすさ、効率の良さ、安定感の高さを知り、よりラクで楽しめる今のロードバイクを乗るようになったということです。
たいせつなこと
最後に大事なことを書いておきます。、安井さんははっきり書かないとこととして、ぼくは文章の中から読み取りましたけれど、現在2024あるいは2025モデルとして販売されている自転車の中には、ここ最近の10数年の開発過程を経ずに販売されている製品があります。何を言っているのかわからないと思いますが、そういう製品が含まれています。具体的に言えば、既成の型で作るような製品です。こうした製品の多くは自転車の大手代理店は扱わない製品です。大抵は新規に取り扱う代理店が出現したり、〇〇ジャパンのようなネーミングがされます。日本国内に日本人がいて、日本語で何かしらの発信をされると安心感が生まれますが、自転車観点の大手代理店とはまったく機能が異なります。コストを掛けない製品は、コストを掛けない事業からコストを掛けない方法で販売されます。
既成の型とは、自転車メーカーやカーボンフレーム製造メーカーが、サンプル用に作った型です。工場が自転車メーカーに対して「こんなの作れます」とアピールするためだったりもします。ちゃんとしていれば良いのですが、開発に先立って開発者が自転車に乗っていないのではないか?と疑うようなジオメトリだったり、エンドユーザーやレーサーからの評価も受け取っておらず、気にもせず反映もされていないのでは?と思うような仕様だったり、とにかく穴だらけであることがほとんどです。ただ、コンピュータで行うデザインは今っぽい外形上に仕上げます(AIによるデザインもあると思います)し、今っぽいカラーにペイントしますし、それっぽいホイールを使っていい感じの見た目とスペックにはなっています。型代も開発費用もかからないので、なんとなくいい感じのデザインと納得感のあるスペックである上に単価が高くならないわけで、「コスパがいい」と言われたりもします。
開発とは地味な作業です。地味な割にコストも時間もかかります。メリダでは1つの製品に約2年くらいの期間を要します。ロードバイクに関しては、台湾でサンプルを作ってはドイツでテストするようなことを10数回繰り返したりもします。製品を外見から比較すると、そのコストのあとを見つけることはできないと思います。実際に乗るとけっこう明快にわかると思います。「わからなければいいじゃないか」ではなく、乗り比べたらその違いはほとんどの人は気がつくはずですが、うまく評価と言語化ができないだけだと思います。クルマで言えば、昔より今のほうが圧倒的に運転しやすくラクであるように、自転車でも同じような変化や違いがあるということです。自転車を熟成させるのはそんなカンタンではないのです。